雨の季節がやってきて、
少し空が明るくなった気がする。
空中の埃が時折消えるから。
「一日が始まるよ」の空は少しまぶしい。
「お昼ごはんだよ」の空はとても高い。
私は夕暮れの空が好きだ。
オレンジから赤へ。
そして深い藍色へ。
だんだん変化していく。
あちこちに
ぽつぽつと
明かりが灯りはじめる。
月が輝く日もあれば、
星が瞬く日もある。
テレビなんてなくても、大ビジョンのスクリーンは感動を与えてくれる。
そんな夜の一時にふと思う。
日本は今、また朝を迎えている。
あの人は、この人は、どんな1日を過ごすのだろう。
カムチャッカの若者がきりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女がほほえみながら寝返りをうつとき
ローマの少年は柱頭を染める朝陽にウインクする
この地球ではいつもどこかで朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そしていわば交替で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴っている
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受け止めた証拠なのだ
『朝のリレー』 谷川俊太郎
いつも9時間前をいく日本。
数時間前を、数時間後を生きる世界の国々。人々。
それぞれの一日。
私の一日は、今日もここで始まり、ここで終わる。