最後に雨が降ったのは、10月の何日だっただろう。
毎日、強い太陽に照らされ、埃っぽい風に体を揺さぶられる。
この家に引っ越してきた日から、そこに存在することは知っていた。
でも。
私は、一度たりとも水をあげたことがない。
玉ねぎの皮一枚、肥料としてあげたこともない。
優しく話しかけたこともない。
それどころか、立ち止まってじっくり眺めたこともない。
それなのに、
それなのに、庭のマンゴーの木に、花が咲いた。
そして、小さな実をつけている。
2mほどの、決して大きくない木を侮っていた。
私はすぐに「暑い」とか「寒い」とか、「今日は疲れた」とか言う。
イイコトがあっては浮かれ、
イヤナコトがあっては不貞腐れ、
一日は長く感じ、
過ぎた半年がとても短く感じ、
感情のままに生きている。
でも、マンゴーの木は、24時間365日を正確に感じ成長する。
すごい奴だ。
自然って、すごい。
どこまでも広がる海。
夜空に咲く無数の星。
満ちては欠け、また満ちていく月。
大地をオレンジに染める夕日。
ちゃんと成長する植物。
自分の悩みなんて、本当にちっぽけだ。
大丈夫。だいじょうぶ。ダイジョウブ。
心強い言葉を思い出して、
強いマンゴーの木を見て、
今日も、強く強く生きていこう。
人間も、きっと強いいきものだ。