「今度、ミカにプレゼントしたいものがあるんだ。」
少年がそう言ったのは、7月の頭だった。
「今度ご飯食べに行こうよ。」と言って、実際に行く人は少ない。
「今度連絡するね。」と言って、実際に連絡をくれる人も少ない。
それが日本の社交辞令。
でも、彼は違った。
「女性の家」を久々に(その会話をした日以来)訪問したら、少年が通りかかった。
挨拶を交わした後で、すぐにいなくなった。
と、思ったら、家に戻っていたらしい。
そのプレゼントを渡すために。
はにかみながら彼が手渡してくれたのは、アフリカ地図。
ベニア板を手でくり貫き、
中にブルキナの国が作られている。
砂絵のように、ブルキナの穀物
(米・豆・ヒエ・トウモロコシなど)が
一つ一つ貼られている。
コンゴあたりが、なぜ血のように赤く染まっているのかは不明だけど、
丁寧に作ってある。
裏にメッセージを書いてもらった。
名前、日付と・・・
『I LOVE YOU』
おっとー。
私もなかなか罪な女だ。
どういう言葉を返したらよい?
「ありがとう。きれいだね。
お腹が空いても、絶対これ食べないからね!」
結局、そんな事しか言えない、恋愛偏差値の低い私だった。
少年は、やっぱりはにかんだ。
この地図は、ただ今うちのサロンに飾られている。